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けやきひろばビール祭り・10年の歩みを振り返る

2019.03.05

2009年春に第1回目を開催した「けやきひろばビール祭り」。9店舗の出店者からスタートしたこのイベントは多い時には100店舗以上が参加、日本最大級のビール祭りとして、多くの人々が心待ちにする春と秋の風物詩になっています。2018年秋には10年目・20回を迎えたけやきひろばビール祭りの担当者、さいたまアリーナの鈴木一紀さんと黒岩麻美さんに、これまでの歩みを振り返ってもらいました。

「地元住民の憩いの場でみんなが楽しめるイベント」が出発点

「けやきひろばビール祭り」の成り立ちを教えてください。

鈴木:このイベントを企画したのは、弊社(さいたまアリーナ)の皆川 裕です。埼玉県で生まれ育った皆川が、近隣在住・在勤の憩いの場としてのけやきひろばでみんなが楽しめるイベントを行いたい」と考えました。ちょうどクラフトビールが注目され始めたタイミングで、高校の同級生だった「コエドブルワリー」の朝霧重治 代表取締役副社長(当時・現社長)に相談したのが発端です。私は2012年秋から、黒岩は2018年春からビール祭りに携わっています。

ビール祭りの特徴はどの点にあると考えていますか?

黒岩:入場料制でなく、キャッシュオンでリーズナブルに買える点ですね。また、ブルワーの皆さんから寄せられるのは「家族連れなど、ビール愛好家以外の来場者が多いので、自社のビールを知ってもらえるきっかけになる」というお声です。他のビールイベントと比べて飲んでもらえる量が多いそうで、それがビール祭りのための限定ビールを造りやすくなることにもつながっているそうです。

開始当初のイベント名は、春が「けやきひろばビアフェスト」、秋が「けやきひろばオータムフェスト」。1回目のコンセプトは「けやきひろばで、Chill out!!」だった

細やかな改善の積み重ねが今の姿をつくった

回を重ねるごとに出店者も来場者も増える中で、どんな変化がありましたか。

黒岩:現在ビール祭りは5日間の開催になっていますが、過去には出店希望者数が急増したため、2週にわたって開催する試みも行いました。また、特に春は混み合いすぎて着席スペースに座れないというお声をたくさんいただいたため、2013年の秋から有料席を設けたりしています。

回を重ねるごとに来場者、出店者ともに増え、10回目の開催時にはけやきひろばよりも広いさいたまスーパーアリーナのコミュニティアリーナに会場を移しました。それ以降、春はけやきひろば、秋はコミュニティアリーナというスタイルが定着しています。

近年新しいブルワリーも増え、来場される方には新しい味を楽しんでもらいたい・出店者数を増やしたいという気持ちもあるのですが、残念ながらスペースには限度があります。現在は来場者スペースを優先して、一時期よりも出店者数に制限を設けさせていただいています。

運営は原則的に出店者、来場者、弊社の希望を汲みバランスをとっています。そのため、大胆な施策や変更というよりは、案内マップの改善やスタッフ配置、清掃ルート変更といった細かい改善の積み重ねで現在の形がつくられた……というのが、スタッフ側の意識ですね。

ビール祭り開催実績

回数 時期 日程 日数 出店者数 場所
第1回 2009年春 5/20-24 5日 9 けやきひろば
第2回 2009年秋 9/19-22・9/26-27 6日 11 けやきひろば
第3回 2010年春 5/7-10 4日 8 けやきひろば
第4回 2010年秋 9/9-12 4日 8 けやきひろば
第5回 2011年春 5/19-22 4日 22 けやきひろば
第6回 2011年秋 9/29-10/2 4日 30 けやきひろば
第7回 2012年春 5/17-20 4日 41 けやきひろば
第8回 2012年秋 9/14-17 4日 51 けやきひろば
第9回 2013年春 5/16-19 4日 60 けやきひろば
第10回 2013年秋 10/2-10/6 5日 75 コミュニティアリーナ
第11回 2014年春 5/29-6/1 4日 79 けやきひろば
第12回 2014年秋 9/19-23 5日 95 コミュニティアリーナ
第13回 2015年春 5/14-17・5/21-24 8日 109 けやきひろば
第14回 2015年秋 9/18-23 6日 104 コミュニティアリーナ
第15回 2016年春 5/11-15 5日 74 けやきひろば
第16回 2016年秋 9/15-19 5日 95 コミュニティアリーナ
第17回 2017年春 5/17-21 5日 77 けやきひろば
第18回 2017年秋 8/30-9/3 5日 102 コミュニティアリーナ
第19回 2018年春 5/23-27 5日 69 けやきひろば
第20回 2018年秋 9/5-9 5日 90 コミュニティアリーナ

ビール祭り出店者数の推移

ビールがみんなを元気にし、楽しませる力になる

印象に残っている回や施策、エピソードを教えてください。

鈴木:私の印象に残っているのは、5回目の開催にあたる2011年の春。東日本大震災後に自粛ムードが広がった中、弊社が企画したけやきひろばでのイベントは取りやめていたのですが、ビールを飲んで元気になってもらおう、応援しようというコンセプトで、震災後初めて行ったイベントが2011年春のビール祭りです。震災で醸造所に大きなダメージを受けた「いわて蔵ビール」も出店してくれましたし、この回から1杯ビールを飲むごとに義援金が集まる仕組みをつくり、2016年秋まで採用しました。

2011年春のビール祭りフライヤー

またコミュニティアリーナでの開催を始めた当初は、賑やかしや集客のためにステージイベントを設けていましたが、規模の拡大に伴い、出店者スペース確保のためにステージをなくしました。

ステージイベントの取りやめには大きな迷いがありました。果たしてビールの魅力だけで来場者が楽しんでくれるだろうか、手持ち無沙汰にならずにイベントとして成立するのだろうか、と。結局は杞憂に終わりましたが、これは来場者が満足できるクオリティのビールを造り、提供してくださっている出店者の方のお力だと心から感謝しています。

黒岩:私が印象深いのは前回の2018年秋。20回記念として、初の取り組みを行いました。たとえばビール祭りのプロモーション動画をつくり、公式サイトや会場で流したり、ビール祭りをより楽しんでもらえるようにとビールセミナーを開催したり。

20回記念の缶バッジも5種類つくりました。ビールの飲み終えたプラカップ5個を本部に持ってきてもらうと缶バッジ1個と引き換える方式にしたのですが、これまで課題として上がっていたプラカップの散乱を抑えられる施策としても有効だった思います。こういった20回記念を期に考えた施策は、今後も続けていく予定です。

けやきひろばビール祭りの運営を担当する黒岩麻美さん(左)と鈴木一紀さん(右)

ブームを文化に定着させる役割を担いたい

今後、けやきひろばビール祭りで実現していきたいことは?

鈴木:けやきひろばビール祭りは「クラフトビール日本最大級! クラフトビールの祭典」を謳っています。クラフトビール人気をブームに終わらせるのではなく、文化として定着していく一翼を担っていると私たちは考えています。そのためにクラフトビールの魅力を伝えるセミナーやガイドブック制作などを続けていきますし、出店者アンケートのように、出店者同士のコミュニケーションを促進するお手伝いをすることがビール業界全体のプラスになってほしい、という気持ちでビール祭りを開催しています。

私としては、「けやきひろば」を象徴するような、コラボレーションビールを毎回造りたいという希望があります。ビール祭りで飲んでもらえるのはもちろん、ひいてはスーパーアリーナやけやきひろば、隣接する飲食店でも楽しんでもらえたらいいですね。

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